2009年2月17日火曜日

Bipolar

「双極性障害―躁うつ病への対処と治療 」(ちくま新書) (新書) 加藤 忠史 (著)


を読んだ。新書ということで,ものすご読みやすく,双極性障害の概要がつかめた。

簡単にいうと,落ち込みの激しいうつ状態になったり,すこぶる元気で過活動な躁状態になったりが入れ替わり立ち代わり起こる精神疾患。元気なのはいいことじゃないかと思うかもしれないが,寝ずに大声しゃべり続けたり,急に金遣いが荒くなってしまったり,攻撃的になったりと社会生活が大きく阻害されてしまうのである。


薬物療法に関する章がおもしろかった。

双極性障害のうつ状態と大うつ病等の一般的な俗に言ううつ病が,病態としては同じうつ症状なのに,有効な薬が違うという。前者には第一選択肢としてはリチウム,後者にはSSRI等の抗うつ薬が使用される。やっかいなのは,うつ症状を呈して精神科を受診した人がうつ病だと診断されたのちに,実は双極性障害であったというケースが多くあることだという。うつ病に対しては抗うつ薬が有効だとされている。しかし,これを双極性障害のうつ状態に使用すると,躁状態に転ずるリスクが高まるらしい。双極性障害に対してリチウムは,うつ状態と躁状態のどちらにも有効に作用するというデータが多く報告されているらしい。だから,双極性障害に対しては(むろん,投薬上の注意点は多々あるが)リチウムが良いのだが,双極性障害で初発の症状がうつの場合に,気分障害のうつと鑑別することがひどく難しい。この辺をどうしていくかが,双極性障害研究における現在のホットトピックの一つであるそうだ。


薬物療法に関する知識をしかと持たねばと再認識させられた一冊。心理の方面から精神科疾患の領域に足を踏み入れると,よくおろそかになりがちな薬物の知識。今のうちに押さえとこ。このような最新の知識をさっと取り込むことのできる本書は,まことにありがたい。下條先生に次ぐ,優し人発見。

(過去の記事で下條先生がやさしいなんちゃらかんちゃらと書いたような。。。。ざっと過去記事に目を通したが確認できず)


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